Culthouse diaspora

風が辿りつかない場所

The best albums of 2018

2019年になった。
新年早々にNHKEテレホリエモン宇野常寛、落合陽一といった数え役満みたいな面子をコメンテーターに緒方恵美のナレーションを乗っけて平成ネット史を振り返るとかいう辛い番組をやっていたが、まあなんだかんだで一時代の一区切り、という感覚はそこそこ多くの日本人が持ち合わせてる感覚らしい。

そしてX JAPANがニューアルバムを出すペースよりは更新頻度が高いことでお馴染みの当ブログも、「平成最後の」年間アルバムベストをトップ10に絞って感想を書いていこうと思う。去年は書いてなかったし、西暦の年間ベストなのに平成最後もないだろうって今自分で思ったけど誰もそんなこと気にしねえだろうからいいや。

10.小松未可子/Personal Terminal


小松未可子ニューアルバム「Personal Terminal」クロスフェード

昨年めでたく17歳教へと入信を果たしたトイズ移籍後2作目となるみかこしのアルバムは、気が付けばアニメの主役ヒロインから脇役まで引っ張りだこになっている当人の勢いがそのまま反映されたかのような野心的で冒険的なアルバム。前作よりキメ曲に欠ける感はあるものの、良い意味でアーティスト志向が強くなったような印象を受ける。未だにコテコテな声優ソングをリリースし続けるキング(旧スタチャ)のノリと、よりオーセンティックなポップスを志向するこの人のノリは多分そんなに一致してなかったと思うので、やっぱりトイズに移籍して良かったよね。


9.High On Fire/Electric Messiah


High On Fire - Electric Messiah

Matt Pike率いるドゥーム/ストーナーメタルトリオの新作は、ここ何作が当たりが続いてた彼らの作品の中でも会心の出来。彼らの重すぎるビートはそのままに、それがスラッシュメタル並みの速度になったら、そりゃカッコいいに決まっているでしょうよ。最高。


8.Cult Leader/A Patient Man


Cult Leader "I Am Healed"

その昔アメリカのソルトレイクシティに、Gazaというバンド名通りに紛争地帯が顕現したかのような音楽をやるバンドがいて、解散したGazaの残党が結成したのがこのCult Leaderだったりする。前作同様にガッツリとConver人脈のバックアップを受けた本作のサウンドは、Gaza譲りのヤケクソに激情を叩きつける攻撃的なトラックと、アコースティックギターアンビエントなメロディを用いて沈み込むトラックとで、躁と鬱とを表現し切った怪作。


7. Heads For The Dead/Serpent's Curse


HEADS FOR THE DEAD (International) - Serpent's Curse (Death Metal) OFFICIAL VIDEO

スウェーデンのとにかく色んなデスメタルバンド(どれも知らん)で色んな楽器を演奏しているJonny Petterssonなる人物と、ドイツのRevel in Flesh(知らん)というデスメタルバンドのRalf Hauberなる人物による2人組デスメタルユニットの1作目。昔のホラー映画(知らん)をフィーチャーした彼らのサウンドは、どこからどう聞いてもEntombedのLeft Hand Pathそのものであった。なのにどうして最後のボーナストラックはWolfbrigadeのカバー(クソカッコいい)なんだ?それより何より金太郎飴みたいにどこ切り取ってもスウェディッシュデスなのに、主な活動拠点がイギリスとドイツなのもどうしてなんだ?何も分からない。

 

6.Daughters/You Won't Get What You


Daughters - You Won't Get What You Want (Full Album)

SwansとConvergeを掛け合わせて瘴気と怨嗟を5割増しでインジェクションしたような劇烈なアルバム。リリースされた時から本作は年間ベスト級だろうと思ってたら、案の定国内外のあちこちの音楽レビューサイトのベスト10にランクインしまくってたのもまあ納得。長い物には巻かれる当ブログも御多分に洩れず年間ベストに挙げておきます。


5.内田真礼/Magic Hour


内田真礼「セツナ Ring a Bell」MV short ver.(2nd album『Magic Hour』収録)

「自分がそのアニメ作品に出演しないのに何故か主題歌を歌う声優」としての確固たる地位を(主に俺の中だけで)確立しつつある内田真礼の2ndアルバム。作曲/演奏陣は基本的に前作と変わらず、よってアルバムの路線自体もさほど変わらず。なんか昔のゲッターロボみたいな古臭いメロディの曲が突如として出現したり、明らかにキラーチューンな曲がやっぱりユニゾンスクエア田淵作詞作曲で複雑な気持ちにさせられるところも一緒。このアルバムが他の声優アルバムより強いと思う点は、内田真礼にどんな曲歌わせたら一番しっくりくるかを完璧に押さえてプロデュースされてるところだと思う。その上で、声優当人の志向とそれが噛み合っているか、というところ。歌手デビューする声優はどんどん増えてて、箸にも棒にも掛からない作品もある中で、このアルバムは年間通してずっと聴いてしまう魅力に満ちたアルバムであった。ベタベタなのはわかってるけど、セツナ Ring a Bellが狂おしいほど好き。


4.Voivod/The Wake


Voivod - The Wake { FULL ALBUM } 2018!

カナダのスラッシュメタルレジェンドの新作。2016年にEPのリリースを挟んだとは言え、フルアルバムはTarget Earthから5年も経過してたのね。不気味でウネウネしたリフと捻くれた展開はまあ昔からの彼らの持ち味なんだけど、良い意味で「隙間」が増えているのがTarget Earth以降の彼らの作品の特徴なのではないかと思ったりする。その隙間が彼らの気持ち悪いリフを気持ち良くリスナーが受け止める一助になっているのではないかなと。間違いなく彼らは復活後の今こそが全盛期だと思う。

 

 

3.The Crown/Cobra Speed Venom


The Crown "Cobra Speed Venom" (FULL ALBUM)

2010年に復活してからなんだかんだで8年経っていたThe Crownの新作。俺はびっくりドンキーに行くと9割方カレーバーグディッシュをオーダーする。たまにトッピングに目玉焼きやチーズを載せたりする。カレーバーグディッシュは、俺の好きなハンバーグと米とカレーで構成されている。このThe Crownの新作にもCobra/Speed/Venomと、俺の好きな単語が3つも入っている。多分彼らも好きな言葉なんだろう。好きなものが3つ並ぶと、パワーが高まる。そして知能指数は下がる。2018年にもなってコブラでスピードでヴェノムな偏差値35くらいの本作は、彼らが2000年にリリースしたDeathrace Kingに匹敵するくらいの大傑作だ。やったぜ。


2.Hopesfall/Arbiter


Hopesfall "I Catapult"

USノースカロライナ出身の叙情ニュースクールハードコアの代表格の何と11年ぶりとなる新作。彼らがSatellite Years期のメンツで再結成したという報せと新アルバムを製作中という報せを知ったのが2016年の11月くらい。そこからこの新作がリリースされるまでに2年くらい間が空いてて、正直言って別にそこまで期待もしてなかったし、半ば忘れかけてたところではあった。あったんだけども、いざ新作を聴いてみたら、再結成ブームがどうのといった雑音を跡形もなく全て吹き飛ばす快作であった。叙情性と浮遊感とエモーションが目まぐるしく交差する展開は健在でありつつ、きちんと現代版にアップデートされた音でそれらが突き刺さってくる。このアルバムで新たなリスナーを獲得出来たりするようなことは多分あんまりないと思う。でも、彼らの最初のEPやSatellite Yearsが好きだった人間にとっては福音みたいな作品じゃなかろうか。そしてそのくらいの熱量のある復活作でもある。I Catapultとか通勤中に聴いてて泣きそうになってしまったよ。


1.Allfather/And All Will Be Desolation


Black Triangle

英国出身のスラッジ/ドゥームメタルバンドの2作目。アコギのアルペジオからカミソリのようなディストーションギターで一気にリスナーを地獄に引きずり込むオープナーのBlack Triangleに、不気味なミドルテンポから怒涛のグルーヴで地獄絵図を展開するBy Sword, by Famine, by Plague、 続くJackal's Night、冒頭のBlack Triangleを対を為すようにアルバムを締めくくるLampedusaは11:33にわたるドラマティックな大曲、そして荒野だけが広がる…。Black SabbathやCathedralらの薫陶を受け、それらを近年のブラッケンドハードコアの質感と切れ味で構築し直したスタイルは強力無比。アルバムの全てがひり付く緊張感と殺伐とした空気に満ち溢れてて初っ端からケツまでもう最高。このアルバムを聴くまで存在を認識してなかったバンドなんだけど、文句なしに2018年の年間ベスト。痺れた。


ちなみに11位以下はこんな感じ。


11.Voices/Frightened

12.Tribulation/Down Below

13.Imperial Triumphant/Vile Luxury

14.Seventh Wonder/Tiara

15.The Ocean/Phanerozoic I: Palaeozoic

16.Sumac/Love In Shadow

17.Erosion/Maximum Suffering

18.Rebel Wizard/Voluptuous worship of rapture and response

19.Obliteration/Cenotaph Obscure

20.Wild Hunt/Afterdream of the Reveller

次点

BUCK-TICK/No.0

・Michael Romeo/War of The Worlds

 

そんなこんなで今年もひとつよろしく。