Culthouse diaspora

風が辿りつかない場所

Unexpect/Fables of the Sleepless Empire(2011)

「人肉水族館」って小林泰三の小説みたいなタイトルの前作から5年ぶり、カナダの懲りないアヴァンギャルドメタルな連中が、今度は「眠れない帝国の物語」を披露するんだってさ!

メタルにおいて「変態」って称される連中は大体二種類に分かれてて、ナチュラルボーンに余人が「それはちょっと…」と尻込みする領域に飛翔(≒墜落)してるタイプと、そんなお花畑(≒血の池地獄)な人達に(よせばいいのに)憧れを懐いて「変態性を追求する」とか言い出してしまうようなタイプがいるのね。で、このUnexpectは間違いなく後者の変態さんなのですよ。夜中に鏡に向かって「私は変態、私は変態、私は変体、私は編隊、私はHENTAI、私は大変!」とか延々と呟いて自意識を高めてるような感じのね。

往々にしてそのような変態メタルというのは、あざとい/お寒い所に落着してしまうものなのです(こいつらも前作はそこを振り切れなかった印象でした)が、本作は継続(≒執着)は力(≒やっちゃった)なりを信じて続けた結果、メリハリと落とし所がくっきりして、見事にブレイクスルーが生まれたような作品と相成りまして、まあ楽しいこと楽しいこと。

しかしだ、生まれたブレイクスルーが自意識の重みで潰れてブラックホール化したSound Horizonみたいな音ってのは、お前ら本当にそれで幸せなのか?って疑問を感じなくもない。