Culthouse diaspora

風が辿りつかない場所

アンブレラ

それがいつからそこにいるのか、誰も知らない。ただ現れては消え、消えてはまた現れる。誰の所有物なのか、誰かが手放したのか。それとも最初から誰の所有物でもなかったのか。

今日が雨天であれば、誰かの忘れ物であるという説明もついたかもしれない。しかし今日は曇天ではあっても大きく天気が崩れることはなく、その出番はなかった。

 ちなみに、こいつが俺のマンションに現れたのは今日が初めてではない。その日の天気に関わらず、そいつはまるで自身がマンションの住人であることを主張するかのようにエレベーターに現れては、また姿を消していく。

 マンションから外に出ようとする時、そいつは先にエレベーターにいて住人を見送り、外から帰ってきた時にも俺たちを迎えている。

 一体誰が、何の意図で?そして何故持ち帰らない?何故かそいつがいる時、かすかに人の気配を感じるような気がするのはどうしてだろう?よく言われることだが、長く使われたものには人の念が宿ることがあるという。では明らかにすぐ打ち捨てられることが決まっているようなこいつらはどうなのだろう?

 俺たちに答えは分からない。答えを知るのは、こいつの持ち主とこいつだけなのだろう。

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……何となくホラー風味っぽい文を書いてみたが、難しいな。ただここまで書いた内容自体は全て本当である。フツーになんか怖いのでやめて欲しい。俺の今の住まい、単身者用のマンションであるにも関わらず結構な人間が住んでいるようだが、そこは現代東京23区、近所の付き合いなぞ一切ないのでどんな住人がいるのかはさっぱり分からぬ。まあ、個人的にはそっちのが良いのだけども。

今のマンションはぼちぼち出ていく予定だったりするので、また引っ越し先を検討するのが面倒だったり楽しかったり。次も穏やかなところだと良いなあ。