Culthouse diaspora

風が辿りつかない場所

Melechesh/Enki (2015)

 

Enki

Enki

 

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 イスラエル出身のオリエント系ブラック/デスメタルバンドの6作目。前作からは約5年ぶりとなるフルアルバム。"オリエント系"なるジャンルが存在しているかどうかは知らんが、細かい事は気にしちゃダメだ。

 

先日リドリー・スコットの「エクソダス」を見てきたのね。「グラディエーターリドリー・スコットが描く人類最古のファンタジー」とかいう煽り文句は、う、うーん?と見る前から思ってたけど、見てみると面白大災害映画として最高だったので個人的には大変に満足しているのですよ。人間ドラマとしても、

モーゼ「ちょっと、神、お前やり過ぎじゃね?」

神「は?エジプト人悪いだろ!?こんなん当たり前じゃん」

とかってくだりが本当にクソッタレで良かった。評判は割りと散々だったらしいけど、お前らはリドリー爺の映画に何を期待して見に行ったのだ?とまあ、それはさて置き、このバンドのフロントマン(画像)が、劇中に出てきたエジプト王(作中最も可哀相な役)みたいな格好してる事を最近知って、笑いが止まらなくなった。どうしてくれる。

 

前置き(?)が随分長くなったが、5年ぶりにバビロンの宝物庫から帰還した彼らの新作は、"イスラエル出身"というアイデンティティを拡大解釈と誇大妄想の上でデスメタルの鋳型にぶち込んでイニシエーションをくぐらせたような音楽性であり、つまり何も変わってねえ。全編からティグリス川の洪水のように溢れかえる胡散臭いトライバル臭は耐性の無い者を一発で笑い転がすのに十分過ぎる破壊力を秘めているし、私のようにそこそここの類の音楽を聞いてきた者でも油断するとティアマトの生贄に捧げられる可能性がある。ちなみに今作にはマックス・カヴァレラやRotting Christのヴォーカルや元Anthraxのロブ・カギアーノがゲスト参加している模様。何やってんだお前ら。

 

93年から活動している老舗のバンドだが、イスラエルというのはこういう音楽をやるには非常に厳しい土地らしく(同じイスラエルのOrphaned Landの連中も亡命してたしね)、フロントマンは結構前にオランダに亡命してたりするなど、何気に波瀾万丈なバンドだったりする。しかし亡命してまで続けたかった音楽がこれかよ、と思うと改めて面白過ぎる気がするのだ。やっぱりNileからのパクリ疑惑が出た時に「Nileが俺たちをパクったんだ」と豪語する連中は違うな。

 

尚、バンド名のMelecheshはヘブライ語で「火の王」を意味する言葉らしいが、私は日本語でこのバンドが何と言うか知っているぞ。

「バカ」って言うんだ。

 


Melechesh - Tempest Temper Enlil Enraged - YouTube